2011年3月1日火曜日

2010年度レジデントアーティスト滞在リポート(日本語翻訳版)

【ソンミン アン Song Ming Ang】

アーカスでの滞在に対する私の感想をお伝えします。アーカスのスタッフが手厚くサポートしてくれ、さらに守谷がやさしい人たちのいる素晴らしい場所だったので、伝えることがたくさんあります。短くまとめたいけど、ちょっとそれは難しそうです。
まずはじめに、守谷市のロケーションが特別であること。東京から近いけれど、東京ではない。そのおかげでアーティストは、東京で大量に催されるイベントに気を取られることなく、制作活動に専念することができます。必要なときはつくばエクスプレスで最短40分足らずで東京に行くことも可能です。まさに両方のいいところ取りが出来る感じです。

アーカスが学びの里というコミュニティセンターにあることもまた、他にない個性となっています。ここは一般の人が訪れ、交流する場所であり、様々な共同使用の設備が使えます。講堂(舞台設備のある体育館)、調理室、広場、バーベキュー場、和室などです。ここで私はスポーツを楽しみ、手作りのものを食べ、テントに泊まり、バンドのリハーサルや人形劇の公演を観ました。ここでの滞在は、美術だけにとどまらず、レジデントアーティストが社会と関わることを促し、人生の様々な面に向けさせてくれます。アーカスは総体的で役に立経験を提案してくれて、それらはものすごく楽しかったです。

アーカスが特別なのはその立地だけではありません。守谷に住む人たちがアーカスを独特な存在にしています。たとえば守谷市役所の人たちがとても支えとなってくれたことがあります。私の作品、“Be True to Your School”への参加者を募った時には、市役所から20人も、勤務時間外にスタジオを訪ねてくれました。他にはボランティアの人たちの存在が、守谷の滞在を特別なものにしてくれました。物を運んだり、翻訳をしてくれる人もいれば、アーティストのお手伝いをしてくれる人、それに食べ物を差し入れしてくれる人もいました。

アーカスのスタッフは称賛に値する人たちで、私から見ると欠点がなく、常に先んじて一層の努力をして、あらゆる仕事を魔法のようにこなします(私の要望にみんながNOと言った記憶がありません)。もう一度ありがとう、と言います。真美、豪介、瑞穂、祥子、そして春海に、守谷での制作活動と滞在をとても楽しいものにしてくれて、ありがとう。みんなはとても気前がよく、思いやりがあって、支えとなってくれました。みんなからの力添えを得て友情を育むことができて本当に嬉しいです。アーカスを家族のように感じ、守谷に住んでいる間は完全に家にいるかのような気分でいたので「滞在」という言葉の本当の意味を表しています。

アーカスでの制作では、守谷から「見出した素材」を用いました- Be True to Your Schoolで昔の大井沢小学校校歌を卒業生と一緒に復活させ、Colour Scaleでは守谷市にある家の色に合わせてグロッケンシュピール(鉄琴)に色を塗り、Love in Translationでは身近な友達に助けてもらってダライ・ラマの本を日本語から英語へ翻訳し、Transpositionではもりや学びの里の二階廊下を、ふれあい通りで集めたゴミ袋25袋分もの銀杏の葉で埋めました。私は親しみやすく「ポップな感じのする」作品を、親切にしてくれたことへのお返しとして特に守谷の人たちに向けて、そして素晴らしい市への贈り物として作ることを目的にしました。出来上がった作品は完璧ではないし、さらによい作品にする方法を取り入れて実現できたかもしれないとも思います。しかし、私の掲げた目的は達成されたと感じているし私は幸せです。
アーカスでのレジデンシーは時間と財政面の援助という、どのアーティストにとっても非常に重要な2つの資源を提供してくれました。ここに来て、私はこれまで親しんできた音楽と音という領域に加えて、社会化(集団化)の触媒としての言語の可能性について注目し始めました。そしてアマチュア(愛好家)の方たちと一緒に制作する方法をも見つけ出しました。それは世間の人たちと繋がり、意味があると人々が考えているアートを協力してつくるために、それまでとは違う方法で計画するということです。思い返せば、言語や漫画のようにより多様なメディアを調査したけれども、私は自分自身の目標に更に集中するようになった気がします。
全てを通して言えることは、アーカスに於けるアーティスト・イン・レジデンスに対して無条件で称賛を贈りますということ。日本で一番長く続いている老舗のレジデンスであり、この国の文化史において唯一無二の位置を占めています。アーカスがひたすら発展・活躍することを信じているし、このすてきな団体の行く末を楽しみにしています。


【ケルダ フリー&ディヴィッド ブレイザー Kelda Free and David Brazier】

私たちはユニークな環境の中で、調査し、新しいことを試すための自由、時間そして空間をアーカスでの滞在から得ることができました。そして、地域に住む人たちの信じられないようなサポートの繋がり・人脈を通して、日本の日常生活の一部を本当に感じることが出来ました。優しく迎えてくださった人たちや美味しい食べ物、みんなの笑い声などたくさんの幸せな思い出が残っています。異なる感性や制作方法に慣れることは時にチャレンジとなりましたが、素晴らしいスタッフたち全員が本当の友達となりサポートしてくれたので、アーカスでの滞在は素晴らしく、実りある、そして刺激的なものでした。

【ジェイソン コフキ Jason Kofke】

アーカスに到着した時、私はこの野心の強い(と感じていた)プロジェクトに対して抱いていた期待というのは、実はささやかなものでした。私の提案が一つでも形になれば、ラッキーだろうと。しかしここで実現したことは、私が想像し、そして期待し得たことを超えていました。スタッフたちの超人的なサポートのおかげで、私のアイディアは形となっただけにとどまらず、基礎から進化し、変更され、具体的なものとなりました。私の知覚は発展しただけでなく、守谷と、そしてアーカスを通じ、ここでわたしの見いだした素晴らしいコミュニティと一体になりました。

自分自身のプロジェクトを完成させるためにあらゆることをしなければならない、とアーティストが予想するのは当然のことです。いつものこうした制作の方法は時間がかかるだけでなく、いらだたしく、気持ちがしぼんでしまうものです。アーカスのスタッフたちや守谷に住むサポーターたちの手助けがあったおかげで、そんな克服できない壁はないように思えました。ここで得たサポートがあったからこそ、私のアイディアと人とのつながりが加速していきました。

日本での3ヶ月間を振り返ると、私の芸術的な修練に対し、本質なものとして身につけていたコンセプトが進化しただけではなく、場合によっては完全に変わってしまったこともあります。例えば、表現するための技術に依存することに対し嫌悪感を抱いていましたが、東京や柏市(千葉県)で活動しているアーティストたちと始めた共同プロジェクトのおかげでその感情は改められました。さらに、自分のアイディアが完全に別のものになったとしても、自分と似たような領域で活動しているアーティストたちと協力することを受け入れることをわたしは学びました。その結果、 アーカスでの3カ月の滞在が終わってからもずっと続くと思える友情を築くことができました。アーティストとしての成長に必要不可欠だった変化だけなく、そばにいないことが想像できないほどの親しい友人やアーティスト同士の繋がりを携えたまま、わたしはアーカスを去りました。

アーカスでの制作の中では、痕跡をのこせたこと―守谷の中で作り、守谷市の一部となり、守谷でたくさんできた新しい友達との関係がずっと続くための仲介をしてくれるもの―が、特に気に入っています。また、私がアーカスで体験した中で一番がっかりしたのは、自分がここをどれほど懐かしがるだろうと気づいたことです。本当にアーカスでの滞在は人生で最高の3カ月のひとつに数えられると思います。

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